4話:旅路

「ということなんですけど・・・聞いてますか?竜胆」
「んあー・・・?」
 葵が真剣に話している時に、竜胆はどこかをぼーっと眺めている。
「だから、四人――水仙様と菫様もお連れして、妖怪を退治しにいこうって
 いう話です!」
 少し間をおいて、竜胆は聞き返した。
「な、なんで二人も一緒に!?」
「実は、菫様がここへ帰ってこられましたのは、水仙様のお父上の遺言で、
 です。水仙様も国を治めよと言われている。――あくまで私は案内係りです」
 へー・・・と竜胆は頷く。
「それで、竜胆。眠気はなくなりましたか?」
「そんな怒んなくてもいいじゃねーか・・・」
 なにしろ、今は午前九時。普通の人は活動している時間でも、竜胆はかなり
朝に弱かった。
「この事は、もうお二人には話しています。・・・だから、もう準備もされて
 いますよ。あなたが一番おくれてるんです」
「おっくれてるー」
 水仙が真顔で声をかけてきた。
「・・・水仙、その・・・変な言葉を真顔でいうの、違和感あるからやめろよ」
「いいじゃないですか。それはあとにして・・・はやく準備してください」
 水仙の言葉に、葵は頷いた。
「お姉ちゃんたちー、私はもう出発できるよー」
「ほら」
 水仙と葵が菫を見た後、竜胆に向き直った。
「でぇーっ二人して俺をせめるなっ!準備したらいいんだろっ!!」
「そのとーりですよ」
 葵は即答した。

「行って参ります」
 水仙は城に残された者たちに告げた。
「本当に――大丈夫で御座いますか?幼い菫様まだお連れになって・・・」
「大丈夫です。いざとなったら竜胆を囮にして逃げますので」
「はぁぁぁぁぁ!?」
 水仙が真顔で言ったことに、竜胆は激しく反応した。
「・・・竜胆は、本望だと思いなさい」
 葵も同じことをいう。
 そして、頭に巡ってきたのはそーこういうことだった。

 馬鹿にされてる。

「あーなんかむかつくー!」
 竜胆は出発してからも文句を言っていた。
「竜胆、あんまし怒っちゃダメだよーすぐ病気になっちゃうよ?」
 菫はにこにこと微笑んで竜胆の相手をしている。
「怒ると病気になるのかっ!?」
「そだよ。悪い病気にかかっちゃうの。だから、にこにこしてなきゃねw」
 二人が話しているのを見る水仙と葵は、微笑ましい光景をみて
竜胆に呆れた。
「葵さん、竜胆は菫ちゃんと同レベルですね」
「いえ、以下じゃないですか?」
 そんなこんなで出発した一行は、村に向ってずんずん歩いていった。

 ――そのころ。

「城から派遣された奴?」
 黄色の髪の少女と、獣。場所は暗い洞窟の中である。
「そうだ。山吹、俺はもう少し偵察してくる。それまではあまり動かない
 方が・・・」
「たかだか四人の人間でしょ。それに童顔も残る青二才と小娘。どこが問題
 だっていうの?」
 獣はゆっくりと歩き出した。
「その四人が、お告げでは――妖怪に害を及ぼすといわれている」
「へえ」
 山吹、と呼ばれた少女は、すぐ側にあった岩に腰掛けた。
「お告げだかなんだか知らないけど――興味あるわね」

続く


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